歴史

西粟倉コインの歴史は以下の通り。

【2014年】放置間伐材を温泉施設の燃料に

岡山県西粟倉村は2014年9月から、山に切り捨てられていた間伐材を、地域通貨と交換する事業「鬼の搬出プロジェクト」に取り組み始めた。

間伐材1トン当たり6000円を支払うことにした。うち3000円分は西粟倉村と美作市内にある商店やガソリンスタンドなど協力35店舗で使える地域通貨「オニ券」で支給した。村が引き取った間伐材は、薪(まき)にしたうえで、温泉の管理委託業者に卸した。

村と民間企業が提携

この事業は、西粟倉村内に拠点を置き、再生可能エネルギー導入の支援を行う民間企業「村楽エナジー」(井筒耕平代表)と共同で実施した。村楽エナジーは「鬼の搬出プロジェクト」を2013年から岡山県美作市で行っていた。その仕組みを受け継いで、西粟倉村で活用することにした。

薪(まき)ボイラーの燃料に

2015年からは、西粟倉村営の温泉3施設で順次導入した「薪(まき)ボイラー」の燃料に充てるようにした。まきボイラーは西粟倉村が2015年3月に「湯~とぴあ黄金泉」(西粟倉村影石)に導入。その後も「元湯」(西粟倉村影石)、国民宿舎「あわくら荘」(西粟倉村影石)へと広げる計画を立てた。

森林が村面積の95%

西粟倉村は森林が村面積の95%を占める。年間約200ヘクタールを間伐している。しかし、搬出に必要な作業道がなかったり、コストが木材売価と釣り合わなかったりし、約160ヘクタールで間伐材がそのまま山に放置されていた。

森林組合で引き取り

間伐材の出荷には登録が必要とされた。対象者は西粟倉村か美作市の在住・在勤者に限定された。間伐は西粟倉村内の森林組合で引き取られた。

【2017年】構想に着手

西粟倉村は2017年に「新規仮想通貨公開(イニシャル・コイン・オファリング=ICO)」導入の検討に着手した。補助金ではない新たな資金獲得を模索するなかで、構想が生まれた。2017年12月2日には西粟倉村職員と関係企業の担当者が課題を洗い出し、今後の方針を話し合った。

世界の投資家から資金調達

世界の投資家から迅速に資金調達することを期待した。一方で、人口約1500人の西粟倉村にどれだけ投資が集まるかは不安視された。加えて、日本国内にはICO自体を規定した法律がないなど、法整備の遅れからトラブルにつながる恐れを指摘する意見も出た。

ビットコインなどを取引所で日本円に換金

計画では、西粟倉村が発行した独自の仮想通貨「西粟倉コイン(仮称)」を、西粟倉村に関心を持つ投資家に「ビットコイン」「イーサリアム」といった流通量の多い仮想通貨で購入してもらう。西粟倉村は、集まったビットコインなどを取引所で日本円に換金し、起業家支援など移住・定住関連事業に使う。

コインで買える独自商品を検討

投資家には「西粟倉コイン」で、西粟倉村独自の特別な商品・サービスなどの提供を検討した。来村して物品購入に使ってもらうことも期待した。

エーゼロがコンサルを担当

西粟倉村内で起業家育成などを手掛けるベンチャーの「エーゼロ」が西粟倉村のコンサルタントを担当した。コイン発行や取引システムなどは「chaintope(チェーントープ)」(福岡県)、コインによる商品購入の仕組みは電子商取引サイトの構築などを展開する「村式」(神奈川県)が担った。

【2018年6月】西粟倉コイン発行を決定

岡山県西粟倉村は2018年6月、仮想通貨を使った資金集めの手法「新規仮想通貨公開(イニシャル・コイン・オファリング=ICO)」の実施を決め、発表した。独自のコインをインターネット上に発行し、興味を持った投資家が購入することで資金を得て、西粟倉村が行う事業費に充てることにした。この時点では、全国の自治体で初めての導入が期待された。

一般社団法人「西粟倉村トークンエコノミー協会」

当時の計画では、民間事業体で構成する一般社団法人「西粟倉村トークンエコノミー協会」を設立する。この協会が西粟倉村と連携して独自コイン「西粟倉コイン(略称:NAC/Nishi Awakura Coin)」を発行する。全体の運営や資金運用なども、西粟倉村トークンエコノミー協会が担う、との計画が立案された。

投資家が「イーサリアム」で購入

西粟倉コインは、連携する仮想通貨交換事業者を介して、ICOで使用が多い通貨「イーサリアム」で投資家に買ってもらう。そのうえで、日本円に換金する。

地方創生事業に充当

コイン発行で得た資金は「地方創生」に関連した事業に充てる計画だった。例えば起業家支援などだ。

投資家に投票権を付与

西粟倉コインを持つ投資家には、投票権を付与するのも特徴とされた。構想中の事業・プロジェクトに投票でき、得票数を資金分配などに反映させる。投資家には村づくりなどに継続的に興味を持ってもらう狙いもあった。

来村時に使える地域通貨にもなる

さらに、事業で生まれた商品やサービスを、西粟倉コインで購入・利用できるとされた。来村時に使える地域通貨の役割も想定した。

日本仮想通貨交換業協会がルールづくり

2018年当時、「日本仮想通貨交換業協会」がICOに関する自主規制ルールを作っていた。村は2021年度までのICO実施を目指していた。